私が企業の責任者とカスハラ対策について話をしていると「企業が適切に接客対応していれば、カスハラが生じることはない」と言われることがあります。こうした発言の背景には、顧客至上主義のもと、完璧な接客対応が当然に必要なのだが、接客対応にミスさえなければ、顧客も満足してカスハラが生じることはないという考えがあるのかもしれません。
それでは、従業員の接客対応にミスがなければ本当にカスハラが生じないのでしょうか。
そんなことはありません。
カスハラ加害者の特徴には、独自の正義感があり、それが固く根付いているというものがあります。周囲の人間にはおよそ理解不能な正義感やマイルールをもっており、カスハラ加害者としては、そのような正義感やマイルールに反した行為を許すことができないのです。そのため客観的に見て従業員がいくら最高のサービスを提供していたとしても、カスハラ加害者の正義感やマイルールに合わないものであれば、カスハラ加害者の中では、許されないものになってしまい、カスハラ加害者の怒りの対象になってしまうのです。
要するに、従業員のミスがあろうなかろうが、カスハラ加害者が独自の正義感で行動している以上、従業員側の行動で制御できる余地は極めて少なく、カスハラが起きるときは起きるのです。
従いまして、ミスをしなければカスハラは生じないということはあり得ないのです。