カスハラ問題が生じた場合に、相手に「上司を出せ。」、「店長を出せ。」、「社長を出せ。」などと要求されることがよくあります。会社は、このような要求に応じる必要があるのでしょうか。
会社としてはこのような要求に応じる義務はありません。顧客がクレームを出した場合に、どの従業員が担当するかは会社が決めることであって、顧客が決めることではありません。そのため、顧客から要求されてもこれに応じる義務はないのです。
だからといって、会社で担当者と決めた従業員がカスハラを行う相手に対して常に一人で対応しなければならないというわけではありません。そもそもカスハラの対応策としては、一部の従業員だけに対応を任せるのでなく、組織で対応すべきですから、複数人で対応すべきでしょう。カスハラの種類にもいろいろあり、例えば、ある従業員にミスがあってそれについては謝罪したものの、顧客が過剰な要求を行う場合があります。その場合にミスをした従業員に対応を任せるべきではなく、他の従業員が対応すべきでしょう。ミスをした従業員では、過剰な要求を拒否することは難しいからです。
あくまでも相手に要求されても応じる義務がないだけで、会社の判断で責任者を出すことは許容されます。ただし、責任者であるがゆえに安易な発言を行うと後で取り返しのつかないことになりかねません。責任者を出す場合には慎重な対応が必要です。
弁護士 能勢章