カスハラ問題が生じた場合に、必ずしも面談しなければならないわけではありませんが、相手に説明を行うために相手との面談が必要なときもあります。
その場合によくあるのが、相手から「すぐに自宅に来てほしい。」と言われることです。
しかしながら、相手方の自宅での面談は避けてください。相手方の家に行くことで、例えば、物を壊したなどといった別のトラブルに巻き込まれる可能性があります。また、仮に暴行や暴言を受けても、助けを求めることも困難です。
会社で面談するのはどうでしょうか。会社も必ずしもお勧めできるわけではありません。会社で担当者が面談していても、自分の要求が通らない場合に、「上司を出せ。」とか「社長を出せ。」と大騒ぎされる可能性があります。またそもそも相手方は往々にして自らの主張が正しいと考えていますから、相手方が自ら行くと言った場合は別としても、会社に呼びつけるのは新たなクレームを招くことにもなりかねません。
それでは、自宅や会社以外ではどこがいいのでしょうか。私が一番お勧めするのは、相手方の自宅近くのホテルのラウンジです。ホテルのラウンジは、常にホテルの従業員が周りを歩いていますから、仮に暴行や暴言を受けてもすぐに助けを求めることもできますし、後々の裁判の証人にもなってもらうことも可能です。防犯カメラがあるところもあり、それも裁判での有力な証拠になるでしょう。また仮に相手方が大騒ぎしても、他の客に迷惑がかかるため、ホテルの従業員が丁寧に注意してくれることも期待できます。加えて、会社に呼びつけるわけでもなく、自宅近くのホテルのラウンジであれば、相手方への配慮を示すこともできます。
もちろん面談場所だけで説得がうまくいくわけではないし、事案によっては、自宅に行くべきときもあるし、会社で行うべきときもありますから、上記を踏まえながら、どこで面談を行うのが適切なのかを検討いただきたいと思います。
弁護士 能勢章