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「カスハラが行われた場合は対応しない」と企業が公表することには、どういう効果があるのか?

最近、カスハラ問題の深刻化を受けて、カスハラが生じた場合における会社としての方針を対外的に公表することが増えてきました。中でも、JR東日本は2024年4月26日に「カスハラが行われた場合は対応しない」との方針を公表しています。このように会社がカスハラに関する方針を対外的に公表することはどういう効果をもたらすのでしょうか。

これまでは、カスハラ問題が生じた場合、会社としては、「面倒な顧客をうまくさばいてくれ」という態度で、一部の従業員に任せきりにすることが多く、現場の従業員の対応如何によっては、「顧客と扱うのか」それとも「カスハラと扱うのか」に違いが生じることがありました。カスハラというのは、単発の行為ではなく、継続的に行われることがよくあります。継続的な行為の中で個々の従業員の対応次第で、状況が悪化することもあれば、逆に沈静化することもあります。個々の従業員の対応能力の違いによって、カスハラと扱うかどうかの違いが生じると言っても過言ではなく、これでは現場の従業員としてはどのように対応すればいいのか分かりません。顧客から見ても対応する従業員によっては正当なクレームもカスハラ扱いされるのではないかとの心配が生じることもあるかもしれません。

このような個々の従業員の対応能力の差に依存するのではなく、会社が「どういう場合にカスハラになるのか」や「カスハラに当たる場合は顧客として扱わない」などを方針として定めることは、現場の従業員にとってやるべき行動が明確になるので有益と言えます。加えて、具体的に対応する際にも、現場の従業員としては、自分が決めたのではなくて、「会社としての方針だから」ということで、一旦攻撃の矛先をかわすことも可能となります。これは精神的な負荷の大きいカスハラ対応においては、現場の従業員の精神的な負担を緩和することにも繋がります。

将来的にカスハラ加害者になるような顧客から見ても、カスハラに対しては断固たる方針が公表されていると、手ごわい相手だと思わせることができるため、一定の抑止効果があると言えるでしょう。「カスハラの加害者の特徴とは?」(2024年5月29日付けブログ)でも記載しましたが、カスハラ加害者は、誰彼無しにカスハラ行為を行っているのではなく、自分よりも立場の弱い人や言いやすい会社を選んでいる傾向があります。常に自分が優位な立場に立てる状況でクレームを言ってくることが多いため、会社がカスハラに対する断固たる方針を公表することによって、それを見た潜在的なカスハラ加害者は自己が優位な立場に立つことができないと悟り、結果的にその会社をカスハラの対象から外すことが考えられます。 

従いまして、「カスハラが行われた場合は対応しない」などの会社としての方針を対外的に公表することは、現場でのカスハラ対応の難易度を緩和して現場の従業員の精神的な負荷を減らすととともに、カスハラ加害者に対する一定の抑止効果も期待できることから、カスハラ対策として実効的なものと言えるでしょう。

ただし、カスハラの判断基準を定めていたとしてもそれが不明確なことが多く、また相応に明確であってもそれをうまく当てはめるのは容易ではありません。顧客から見ても、正当なクレームまでカスハラ扱いされるのではないかとの心配があるでしょうから、あまり行き過ぎると、「感じの悪い対応をする会社」だとの評価がつきかねません。このような評価がSNS等を通じて広まると、それはそれで会社としての信用を害する可能性があります。

大切なのは、現場の実情に合致していて、かつ、現場の従業員にも分かりやすい、カスハラの判断基準を作成することです。そうすることで、正当なクレームをカスハラ扱いすることもないでしょう。また、カスハラに当たることを説明しやすくなりますから、会社としての信用を害する可能性も少なくなると思われます。

もしカスハラの判断基準を作成するのにお困りなら、当事務所にご相談ください。多くのカスハラ事案から得られた実践的なノウハウに基づいた基準やマニュアルを作成することができます。

弁護士 能勢章

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弁護士 能勢 章

この記事を監修した人

能勢総合法律事務所代表弁護士。
私は従業員の精神が破壊されないよう、当事者に寄り添い、事件を解決することで悩みや不安を和らげ、新たな第一歩を踏み出すお手伝いをしたいと考えています。

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