カスハラ問題が生じた際、カスハラ加害者は従業員に対して謝罪を求めるとともに土下座を要求することがよくあります。このような土下座の要求に対して、企業側としてはどのように対応すればよいのでしょうか。
土下座を要求されるぐらいですから、カスハラ加害者から執拗に攻め立てられる状況であることが想定され、その状況から逃れたい一心で土下座してその場を収めたいという気持ちを抱くかもしれません。
それでは、土下座をしたら本当にその場は収まるのでしょうか。
そうなる保証はどこにもありません。収まるどころかより状況が悪化することすらあります。
土下座とは、日本に伝わる礼式の一つで、土の上に直で坐り、ひれ伏して礼を行うことで、深い謝罪や請願の意を表する場合などに行われます。土下座をしたということは、企業として最上位の謝罪をしたに等しく、それだけ悪いことをしたのだろうということで、自らの立場により自信を深めることになるでしょう。カスハラ加害者は、相手を選んで事に及びます。強そうな相手や面倒な相手には、執拗な要求を行わないことが多いです。土下座をすることで弱気の姿勢を見せれば、嵩にかかってより高い要求する可能性もあるのです。
従いまして、土下座を要求された場合は丁寧に断るべきなのです。
仮に企業側に不手際があった場合であっても、不手際についての謝罪は行うものの、土下座自体は拒否すべきです。例えば、「ご不便をおかけしたことは本当に申し訳ございません。しかしながら、これが精一杯の気持ちですから土下座についてはどうかご勘弁頂けませんか。」などと述べて丁重に断るべきでしょう。
弁護士 能勢章