カスハラ案件においては、カスハラ加害者から執拗にクレームの電話がかかってくることがあります。会社としては、このような電話がかかってきたときにどのように対応すればいいのでしょうか。
まずは、相手の要求内容を聴取することが重要です。要求内容を聴かないと、クレームが正当なものかどうかの判断がつかず、会社としてどのように対応すればいいかを決めることができません。そのような要求に至った理由や経緯も聴き、事実関係の裏付けを取る必要もあります。聴取した情報を関係部署で共有するとともに、カスハラに当たると判断した場合には、事前に定めた方針に従って、具体的な対応方法を決定しなければなりません。
電話対応の態度としては,最初の段階は、相手の要求を否定せずに、聴く姿勢に徹し、カスハラ加害者が執拗に対応を求めても、「社内で検討させて頂きます。」と回答し、電話を切るという対応でいいかと思います。2回目以降に、会社としての判断を伝えることになりますが、カスハラ加害者の要求に応じることはできないので、議論の平行線のまま電話が来なくなるのを待つということになります。
電話対応を行ううえでは、カスハラ加害者が特定の従業員を指名してくるときもありますが、これに応じる必要はありません。誰が対応するかを決めるのは会社側であって、カスハラ加害者ではありません。カスハラ加害者は、電話対応においても、クレームを言う相手を選んでいます。カスハラ加害者にとって、言いやすい相手を選んで指名することがあるのです。特定の従業員に対応が集中するのは精神的な負荷がかかりすぎてしまいます。カスハラ対応は複数人で行うべきですから、必要に応じて会社の判断で担当者を変えるべきでしょう。
カスハラ加害者から長時間電話をしてくることもよくありますが、これについても会社として付き合う必要はありません。暴言がある場合は当然として、暴言自体はなくても、長時間クレームを言われ続けるのは精神的な苦痛を伴うものです。ある程度話しても、解決の方向性が見えない場合には、「社内で検討させていただきます。」などと言って、一旦電話を切るべきなのです。
カスハラ加害者から何度も何度も電話がかかってくることがあります。会社としては付き合う必要はないのですが、代表電話やお客様窓口に電話がかかってきたときは対応せざるを得ません。電話対応するのが毎回同じ従業員というわけではないでしょうから、カスハラ加害者が「この前の人から話を聞いていないのか。」、「この前の人はこう言っていたが、あなたは違うことを言うのか。」などと責められる可能性があります。そのため、事前に関係部署で情報を共有しておくことが重要です。また、クレームの担当部署とは違う部署に電話がかかってきて、クレームを言われることもあります。その場合は、担当の部署に電話をかけるように伝えて電話を切るのでいいかと思います。何度も電話がかかってきて電話が止む気配がない場合には、専門の弁護士に依頼して、警告文を送付してもらうともに、窓口を同弁護士に変更するという手段も検討すべきでしょう。
カスハラ加害者が暴言を吐く場合には、録音することも検討してください。予め事前のアナウンスで録音する旨があれば問題ないですが、仮にそのようなアナウンスがなくても、「殺すぞ」などの暴言を吐く場合には、証拠の確保という意味においても録音を行うべきでしょう。
弁護士 能勢章